虐待かなと思ったら… 189 虐待かなと思ったら… 189

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理事長挨拶

ご挨拶

 児童虐待防止全国ネットワークは、2001年、「児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク」として誕生しました。2000年に「児童虐待の防止等に関する法律」(通称:児童虐待防止法、以下同)が施行され、子ども虐待に対する本格的な取り組みが始まりましたが、それでも法律の内容や制度は、まだまだ十分とはいえませんでした。そこで、子どもの福祉にかかわるあらゆる分野の皆さんに呼びかけ、子ども虐待の防止、子どもの福祉の増進を目的に、意見交換・情報交換とともに、法制度改正を求めるソーシャル・アクションを行う団体として活動を開始しました。

 児童虐待防止法制定以降、私たちは、児童虐待防止法や児童福祉法、民法親権規定等の改正に向けた提言、要保護児童対策予算の地方公共団体への税源移譲見直しに関する調査・提言等の活動に加え、法改正に関するシンポジウム、専門職向けの研修なども行ってきました。「子どもの虐待死を悼み命を讃える市民集会(鎮魂集会)」も2022年で20回を数えています。2006年からは、「子ども虐待防止オレンジリボン運動」にも本格的に取り組むことになりました。それを機に、法改正だけでなく、子ども虐待を防止する活動を展開するため、名称を「児童虐待防止全国ネットワーク」と改めることに致しました。

 このように幅広い活動を展開し、社会に働きかけていくためには、団体としての責任を適切に果たすことが必要になります。そこで、東京都にNPO(特定非営利活動)法人の認証を申請し、2007年8月に法人として認められ、2013年には認定NPO法人としての認証も受けました。これも、これまで私どもの活動を支えて下さった皆様方のご支援の賜物と感謝申し上げる次第です。

 さて、私ども「児童虐待防止全国ネッワーク」は、現在、3つの事業を遂行しています。

 第1は、子ども虐待の防止にかかわるさまざまな団体と連携し、児童虐待防止法制度の見直しを求めるソーシャル・アクション事業です。この目的のために、法律や制度の施行状況を調査、検証し、さらなる改善に向けて、シンポジウムや研修、提言等さまざまな活動を展開してまいりました。これらの活動は、2000年における児童虐待防止法の制定以後の児童虐待防止関連の法制度改正につながり、2016年には児童福祉法の理念の見直しを含む抜本的な法改正が行われました。また、2019年の児童福祉法、児童虐待防止法の改正に取り組み、2022年の民法改正では親権の懲戒権の廃止を訴え、「体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」の禁止が実現しました。

 第2は、オレンジリボン運動を中心とする、子ども虐待防止のための広報・啓発活動です。子ども虐待に関する社会の理解は深まりつつあるとはいえ、まだまだ十分とはいえません。子育てに悩む親を支え、不幸にして虐待を受けてしまった子どもたちへの支援を行うためには、社会全体が子ども虐待についての理解を共有し、それぞれができることを果たす必要があります。そのための具体的取組みとして、オレンジリボンの普及を目的とするオレンジリボン運動を行っています。また子ども虐待の予防を目的として「子どもと子育てにやさしい社会が『子ども虐待のない社会』の実現につながる」との理念のもと、「一人ひとりができることをして虐待のない社会をめざそう!」と呼びかけ、「オレンジリボン・フォーラム(フェスタ)」を開催しています。他方で、子どもの虐待死という厳しい現実を直視し、虐待で命を落とした子どもたちの冥福を祈り、虐待死防止の思いを新たにする「子どもの虐待死を悼み命を讃える市民集会(鎮魂集会)」も毎年実施しています。さらに、子ども虐待の大きな原因である「しつけの名による虐待」をなくすため、「叩かない子育て」を普及する活動や啓発も行ってきました。私たちは、オレンジリボンをシンボルに、布リボンやバッジ等の配付、鎮魂集会・シンポジウム等を通じて、「子ども虐待のない社会」をめざす活動を今後さらにさらに拡げていきたいと考えています。

 第3は、さまざまな民間団体との連携です。子ども虐待の防止は、行政機関や専門職だけで実現する事柄ではありません。子ども虐待の予防、介入、支援、啓発のそれぞれの場面で、現在、さまざまな民間団体がその独自性と専門性、柔軟性、先駆性をもとに、地域で生活する人々に身近な存在として活動を展開しています。これら民間団体が、それぞれの特徴を活かし継続的に活動するためには、民間団体の自助努力だけに頼るのではなく、国や自治体による支援とともに、それぞれの団体の協働と支援が必要です。当ネットワークとしては、民間団体が今後も活動を継続することができるよう、意見交換・情報交換の機会を設けるとともに、啓発を中心に活動の支援を行っています。

 どうか皆様におかれましては、私どもの活動の主旨をご理解頂き、それぞれの方がそれぞれの方法で、子ども虐待の防止にご協力をいただければと存じます。皆さまとともに手を携え、「子ども虐待のない社会」を実現する、それが私たちの願いです。

2023年1月

認定特定非営利活動法人 児童虐待防止全国ネットワーク
理事長 吉田恒雄

プロフィール
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認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク
理事長 吉田 恒雄

駿河台大学名誉教授。専門は民法(家族法)、児童福祉法。民法・親権制度の研究から児童福祉に関心をもち、児童虐待に関する法律問題を研究しています。その延長線上として、児童養護施設等の社会的養護のもとで生活する子どもの権利擁護の問題に取り組んでいます。著書としては、『児童虐待への介入-その制度と法-』(編著、尚学社)、『児童虐待防止法制度-改正の方向性と課題』(編著、尚学社)『子どもオンブズパーソン』(編著、日本評論社)、『日本の児童虐待防止法的対応資料集成』(編著、明石書店)、『親族法・相続法』(共著、尚学社)等があります。

社会的活動として、法務省法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会委員、厚生労働省社会保障審議会児童部会児童虐待の防止に関する専門委員会委員、厚生労働省児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会座長等を歴任しました。