安心できる養育環境が得られずにつらい思いをしている子どもをなくしたい、そして子育てに悩んでいる家族を助けたい、この思いは社会に広く共有されるようになってていると思います。その結果が、全国の児童相談所における児童虐待対応件数の増加としてあらわれているのではないでしょうか。子どもを取り巻く身近な人たちが、虐待に気づき、支援につなげる、こうした活動が徐々に広がってきたのだと思います。しかし、つらい思いを抱えていても声を上げられず助けを求められないでいる子どもや家族が、今もたくさんおられるのではないでしょうか。私たちは、こうした子どもと家族に気づき支援につなげる取り組みをさらに強めていく必要があると思います。
当ネットワークはそうした人の輪を広げて、子どもの虐待が起こらないように子育て家庭を支援することを目的として活動を展開しています。虐待は家庭が抱える様々な困難の一つの現れだと考えられます。それは経済的な困難であったり、社会的に孤立していることであったり、精神的な悩みを抱えていることであったり、夫婦間の不和であったり様々です。こうした問題が少しでも解消されて、子育てに行き詰まることのないように、幅広い子育て支援が充実し子ども虐待を予防すること、これが何よりも求められているのだと考えています。ひとりひとりの市民が子育て家庭を温かい目で見つめ、手を添え声をかけて、子ども虐待が起こらない社会を実現できるように、私たちは活動を広げていきたいと思います。
ひとりひとりの方ができることには様々な形があると思います。まずは知ることから始まり、そして何かできることはないか考え、手をつなげる人同士が歩みを共にしていけるとよいと思います。そのような取り組みがつながりあって、地域全体で子育て家庭を温かく包み込めるような社会を目指して私たちの活動を継続していきたいと思います。
みなさまが当ネットワークの活動に関心を持ってくださり、私たちの取り組みにご協力いただいたりご参加いただけますと大変にうれしく思います。当ネットワークへのみなさまの継続したご支援を心からお願い申し上げます。
認定NPO法人 児童虐待防止全国ネットワーク
理事長 川松 亮
【プロフィール】
明星大学常勤教授
東京都の福祉職として、児童養護施設等で勤務の後、児童相談所で児童福祉司として勤務。その後、厚生労働省児童福祉専門官、子どもの虹情報研修センター研究部長を経て現職。
こども家庭審議会児童虐待防止対策部会委員、児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会委員、東京都児童虐待死亡事例等検証部会部会長、中野区児童福祉審議会委員長などを務める。